生物科学セミナー 第851回 5月14日(水)16:30〜18:00
講演題目:植物の光応機構:フィトクロムとフォトトロピンを中心として |
講演者名:長谷あきら(京都大学大学院理学研究科生物科学専攻植物学系) |
講演の概要
植物は、外界の光環境を光受容体を用いて感知しており、その光受容システムは、他には例を見ない様々な特徴をもつ。フィトクロムとフォトトロピンは植物の主要な光受容体であり、フィトクロムは主に赤色光・遠赤色光に加えて青色光を、フォトトロピンは青色光を感知している。我々は、これらの光受容体が植物体内でシグナルを伝える仕組みに興味をもち研究を続けてきた。本講演では、以下の内容について最近の研究成果を紹介する。
1)フィトクロムの構造と細胞内シグナル伝達機構;フィトクロムの各種断片や変異を導入したフィトクロムの生理活性を調べ、シグナル伝達に必要なコア構造に関する分子レベルの知見を得た。 2)フィトクロムとクリプトクロムの組織特異的役割;光受容体を組織特異的に発現させ、フィトクロムとクリプトクロムが別の組織で花芽形成を制御することを見出した。 3)フォトトロピンのシグナル伝達機構;フォトトロピンの細胞内分布を調べ、phot2の一部が光依存的にゴルジ体に結合することを見出した。また、その光感受性がN-末端側構造により決まることを示した。
参考文献 Yamaguchi et al. J. Cell Biol., 145:437-445. (1999) Matsushita et al. Nature, 424:571-574. (2003) Oka et al. Plant Cell, 16:2104-2116. (2005) Endo et al. Plant Cell, 17:1941-1952. (2005) Endo et al. Plant Cell,19:84-93. (2007) Kong et al. Plant J., 45:994-1005. (2006) Kong et al. Plant J.,51:862-873 (2007) |
理学部生物学科植物学コース