弥生中期相当の韓国勒島人骨の頭蓋形態

日時:1月11日(金)16:30−18:00
場所:理学部2号館402号室
演題:弥生中期相当の韓国勒島人骨の頭蓋形態
講演者: 藤田 尚先生(新潟県立看護大学)
講座区分:人類学談話会


要旨: 
 現在まで、韓国の古人骨研究でまとまったものは、日本の古墳時代初期に相当する礼安里人骨の報告があるのみと言って良いだろう。しかし、礼安里人骨は個体数こそ70個体を数えるが、保存状態が良好なものはごくわずかであった。 平成16年度から行った勒島人骨群は、礼安里人骨の時代をさかのぼること約400年。日本の弥生時代の中期初頭に相当し、しかも極めて保存状態が良好な個体が数多くある人骨群である。また、当時の韓国にどのような疾病が存在したかと言う観点での研究は、現在まで全くなされていない。結核の起源など、渡来人によって日本に持ちこまれた疾病を解き明かすことは、昨今の古病理学の大きな課題であり、日本、韓国を始めとする、東アジアの疾病史の研究においても、非常に価値が高いものと思量された。 以上のような観点から、平成16年度より、基盤研究(C)「韓国勒島出土人骨に関する形質人類学的研究」を行い、日本の弥生時代中期相当の、韓国南部の人骨の形質や古病理学的分析を進めてきた。 勒島人骨に関しては、まだ今後の精査が必要であり、軽々に結論を出すべきではない。しかし、日本の縄文時代人とは、根本的に異なった形質を持っているといって良く、前述の通り、北部九州・山口県地方の渡来系弥生人により類似する傾向を持つといって間違いではないと思われる、しかし、人骨のバリエーションが大きく、さまざまな系統が混在(混血)している可能性もある。 人骨は、風葬された状態で出土しており、この風習は、ロシアおよび中国方面からの影響であると考えられている。その点でも、北部九州の甕棺葬とは異なる。 今後は、同時期の中国出土の古人骨や、韓国のより古い時期の人骨との形態比較が必要となる。 本発表では、勒島人骨の頭蓋の形態を中心に考察する。

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