マイクロサテライトリピートの分子進化とヒトの病気−間違いは繰り返し起こりやすい−

日時:6月8日(金)16:30−18:00
場所:理学部2号館402号室
演題:】マイクロサテライトリピートの分子進化とヒトの病気−間違いは繰り返し起こりやすい−
講演者:黒崎辰昭(分子人類・分子進化学研究室)
講座区分:人類学談話会


要旨 マイクロサテライトリピート(長さ1−6塩基の繰り返し配列)は非常にありふれた配 列(ヒト全ゲノムの3%を占める)であり、ヒトゲノム中には100万以上の遺伝子座が 存在する。さらにその突然変異率の高さから、個体間においてリピートの長さの多型 が豊富で、遺伝的マーカーとして集団遺伝学などの研究に有益である。この遍在性と 高い突然変異率から、ゲノム進化においてその重要性がこれまで指摘されてきた。し かしながらマイクロサテライトリピートがヒトゲノム中に豊富に存在する理由や、リ ピート長の多型を引き起こす突然変異の分子的メカニズムについては不明な部分が多 い。マイクロサテライトリピートの大部分は進化的に中立であると考えられている が、ヒトにおいて幾つかのリピートの突然変異(伸長変異)が、神経疾患、筋疾患、 発生障害などこれまで40種以上の病気の原因となることが知られている。これら病気 の内、脊髄小脳変性症(Spinocerebellar ataxia; SCA)は主に脊髄、小脳、脳幹に 部位特異的な神経細胞死を生じ、運動機能に障害をきたす神経変性疾患である。本講 義では脊髄小脳変性症1型、10型原因遺伝子中に存在するマイクロサテライトリピー トを例として、霊長類内におけるリピート配列の比較解析を行い、得られた知見を基 にその機能的側面を議論する。

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