種内変異と種間変異の比較から見る適応進化
 
日時: 5月2日(火)16:30〜18:00
演者:五條堀 淳  (分子人類・分子進化学研究室)
演題:種内変異と種間変異の比較から見る適応進化
場所:理学部2号館402教室
区分:人類学談話会
要旨:アミノ酸置換にかかる淘汰圧は、分子進化における2つの段階、種内変異
polymorphism)と種間変異(fixation)で異なる可能性がある。Polymorphismにお
いては、負の淘汰と遺伝的浮動が主な力として働き、fixationにおいては遺伝的浮動
に加えて正の淘汰が主な力となりうるためである。本研究では非同義置換を75種類
のアミノ酸置換(1つの塩基置換のみでおこるもの)に分けて検証した。それぞれの
75種類のアミノ酸ごとに、polymorphismのなりやすさの指標 (Polymorphism
Index, PI)とfixationのしやすさの指標(Fixation Index, FI)を計算し、ヒトの
種内変異とヒトーチンパンジーの種間変異のデータを用いて、ヒトの進化においてゲ
ノムレベルでどれだけの正の淘汰を検出できるか、polymorphism
fixationの段階においてアミノ酸置換にかかる淘汰圧が異なるかどうかを検証し
た。またネオダーウィン主義と分子進化の中立説の双
方から予言されるアミノ酸進化の傾向、すなわち「進化の上では物理化学的特性を大
きく変化させるアミノ酸置換よりも、物理化学的特性を大
きく変化させないアミノ酸置換の方より多く起こる」という予言についても検証す
る。