東京大学大学院理学系研究科 生物科学専攻
第37回 進化多様性生物学セミナー
心臓発生における細胞の増殖と分化の制御
竹内 隆(三菱化学生命科学研究所)
日時:2007年7月5日(木)午後4時〜6時
場所:東京大学 理学部2号館 第2講義室(223号室)
要 旨:
発生過程では,細胞の増殖および分化が時間的・空間的に精緻に制御される.この制御は,それぞれの組織が必要とする形態,サイズ,機能を獲得するために必要不可欠であるが,いつ,いかなるシグナルが細胞周期をどのように調節するのか,また,そのシグナルと分化の関係など,多くが謎である.私たちは,jumonji
(jmj)遺伝子の発見とその機能研究を通じて,主に心臓を舞台に,この問題に取り組んできた.そして,jmjが細胞周期調節蛋白質であるサイクリンD1の転写を抑制することにより,心筋細胞の増殖にブレーキをかけ,同時にGATA4などの転写因子群の発現制御を通じて,分化を進行させることを明らかにした.また,jmjはヒストンのメチル化を促すことにより,サイクリンD1の転写を抑制することも示された.方や,心臓の発生と心筋細胞の分化と増殖に重要な機能を持つNkx2.5遺伝子においてダイナミックなクロマチン制御が発生過程の中で起こることを見出した.今回のセミナーでは,これらの研究について,ご紹介したい.
世話人:進化多様性生物学大講座 塚谷裕一(Tel: 03-5841-4047)