動物科学特論I

327Zoological Conference

 

日時: 1217(水)16:20-17:20 

演者: 本郷 裕一 博士

(理化学研究所・環境分子分解科学研究チーム)

演題 シロアリはなぜ木だけを食べて生きていけるのか

 

シロアリは植物枯死体のみを餌とする社会性昆虫で、温帯〜熱帯における極めて重要な分解者である。特に熱帯では土壌昆虫の95%(重量)を占め、植物遺体の約10%を無機化している。結果として、陸上CO2総排出量の約2%、メタンの2−4%がシロアリ由来と推定されている。こうした生態学的重要性に加え、人間にとっては重要な木材害虫でもあり、また木質バイオマス由来の次世代バイオ燃料開発への応用という観点からも、世界的な注目を集めている。ところが、シロアリの木質分解と生存に不可欠な役割を果たす腸内微生物群集の大部分は、未だに分離培養に成功しておらず、個々の共生微生物種の分類・生理・生態・相互作用はほとんど未知のままであった。

本特論では、培養できない腸内共生細菌優占種の全ゲノム増幅法を用いたゲノム完全解読など最新の研究成果を中心に、培養非依存的手法により解明されつつある驚異のシロアリ腸内共生メカニズムを紹介する。

参考文献

1.            Hongoh, Y., et al. (2008). Genome of an endosymbiont coupling N2 fixation to cellulolysis within protist cells in termite gut. Science 322, 1108.

2.       Hongoh, Y., et al. (2008)Rast. Complete genome of the uncultured Termite Group 1 bacteria in a single host protist cell. Proc Natl Acad Sci U S A. 105(14), 5555

 

場所:理学部2号館 第1講義室(201号室)

担当: 東京大学大学院理学系研究科・生物科学専攻・動物科学大講座

  (TEL: 03-5841-4018)細胞生理化学研究室