第1068回生物科学セミナーを開催します(2/24(水) 17:00~ 3号館412講義室)

 

第 1068 回生物科学セミナー

日時: 2月24日(水) 17:00-18:00

演者: 冨田 太一郎 講師 (東邦大学医学部 生理学講座 統合生理学分野)

演題: p38 MAPKの定量的イメージングにより明らかになった新たな炎症シグナル制御機構

限られた数の分子が外界環境からの情報をどのように細胞内に伝えて、どのように生理機能を制御しているのか?現在までに、生体内分子のシグナル伝達を理解するため、遺伝学あるいは生化学的な手法を中心に膨大なwetデータが集められて、そのデータを基にイン・シリコで仮想的な細胞のシグナル伝達システムを数理的に再構成することまで可能になりつつある。数理モデルやコンピュータシミュレーションの発展は正常な生理機能の理解だけでなく、シグナルの破綻に伴う病態の理解や新たな治療法の開発という側面からも非常に有益であると思われるが、その一方で、生きたモデル動物やヒト細胞でリアルに生じている現象を定量的に解析して理解する手法についてはまだまだ発展途上にある。

我々はストレス応答経路のMAPK経路のリン酸化シグナルを生細胞で可視化する蛍光タンパク質性FRETプローブの開発を行い、これを用いて、サイトカイン刺激によって細胞内に生じるp38 MAPK活性をリアルタイムに、かつ、定量的にイメージングすることに成功した。その結果、単一細胞レベルではp38活性が増減を繰り返すオシレーション(振動)を呈しており、さらに興味深いことに、細胞毎にその挙動は不均一な応答を示した。今回、このp38活性の定量的イメージングと数理モデルとを組み合わせた解析を行い、炎症性のp38シグナルの制御機構とその生理機能発現について新しい知見を得たのでこれを報告したい。蛍光イメージング法や数理モデル化手法は実用に際して解決すべき問題点は少なくないが、アイデア次第で従来法では全く予想もつかない現象を目の当たりにできる。新しい方法論についてもぜひ議論したい。

場所: 理学部 3号館 412号室

担当: 東京大学大学院理学系研究科・生物科学専攻・黒田研究室