公開ラボセミナーを開催します(望月 敦史先生 3/31(火)3号館412講義室)

公開ラボセミナー

日時: 3月31日(火) 17:00-18:30

演者: 望月 敦史

   (理化学研究所・望月理論生物学研究室/CREST, JST)

演題: 化学反応システムの摂動応答をネットワーク構造だけから決定する

生命現象の多くは様々な生体分子が関わる複雑なシステムから成り、そのシステム全体のダイナミクスから生命機能が生まれるのだと分かってきた。しかし、生体分子ネットワークは分子間の相互作用関係だけを示しており、その情報だけではダイナミクスを決定できない。これに対して私は、ネットワーク構造とダイナミクスとを直接結びつける数理理論を複数開発し、これを用いて実際の生命現象の解明に挑んでいる。今回は、最近開発した化学反応系に対する関数フリー理論とその適用研究を中心に紹介する。

 生体内の化学反応は連鎖的につながり、ネットワークを形成することが知られている。このシステムのダイナミクスを理解する目的で、反応を司る酵素に操作的撹乱を与え、化学物質の濃度変化を測定する実験がなされ始めている。しかしそうした摂動実験の結果は、直感的理解が困難だと考えられてきた。これに対して我々は、化学反応ネットワークの構造だけから、摂動に対するシステムの応答を定性的に予測する数理理論を構築した。様々な仮想的ネットワークに対して解析を行った結果、化学反応系の応答はネットワークの形と摂動を与える箇所に依存して大きく変化し、特徴的な振る舞いを示すと分かった。さらに解析を進め、ネットワークの形と摂動応答パターンを結びつける「一般則」を発見した。現在、この理論を中心代謝系ネットワークに適用する共同研究を進めている。中心代謝系のネットワークには、未知の反応や制御が存在する可能性が高い。実験と我々の理論を比較することで、未知の制御の予測と検証を行い、実際の化学反応系を解明できると期待している。
Mochizuki A. & Fiedler B. J. Theor. Biol. (2015) 367, 189-202.

場所: 理学部 3号館 412号室

担当: 東京大学大学院理学系研究科・生物科学専攻・黒田研究室