平成21年度受講生による授業紹介

2009年度講義情報

平成21年度受講生による授業紹介です。科目名、内容が現在とは異なる場合があります。

生物データベース論

データベースシステムの基礎と生物情報科学への応用について講義する。この場合のデータベースとは関係データベースのことを指す。関係データベースとは、文字通りあるデータとデータの「関係」を記したデータベースのことで、具体例として「ある種の花の個体ごとの遺伝子型」と、「その花の開花日」の関係などが挙げられる。講義ではこのようなデータベースシステムを扱うための基礎知識として、級間/級内分散、F値、 Gray Code、深さ優先探索、幅優先探索、A*アルゴリズム、並列探索の基礎などを扱った。

生物化学実験

生物化学科と合同で行う。3~4人の班に分かれて行う。 前半は生物化学科の担当で、器具の取扱いや成分分析法や大腸菌の培養法などの基礎を身につける。後半は生物情報科学科の担当で、マイクロアレイを使った mRNAの定量などを行う。 駒場の基礎実験との大きな違いは、実験者はかくあるべしと期待されることが我々に任せられていることである。決められていることは、定められた期限までにレポートを提出すること、とがめられない程度に実験に参加することくらいである。 もう一つの違いは待ち時間が多いことである。その間に何をするかは自由である。図書館にこもる(閉じ込められる!?)者もいるし、生物化学科と親睦を深める者もいるし、上野に靴を買いに行く者もいる。実験中の雰囲気は和気あいあいとして楽しく、仲良くなる絶好の機会である。仲良くなる相手は1.同期の同学科、2.同期の生物化学科、3.TAの大学院生で、この順に可能性が高い。

生物ネットワーク論(有田先生)

内容としてはInformation Retrieval、Page Rank algorithm、small world network、scale free network、べき分布、代謝ネットワーク、ベイジアンネットワークなど多岐に渡り、概論的な授業になっています。概論的な授業といっても教科書に載っている知識をただつなぎ合わせたというより、教官がそれらを自分なりに再構築した内容におり、他では聞けない印象に残る授業でした。

ゲノム配列解析論

現在、シークエンス技術の飛躍的発達により、膨大なゲノムデータを得ることが可能となった。こうして蓄積された大量のゲノムデータと実験結果をもとに、塩基配列から遺伝子の機能を予測する取り組みがなされている。講義の前半では塩基配列の類似度を求めるラインメント技術を学び、後半では、遺伝子の進化系統樹とRNAの2次構造予測の手法を学ぶ。また、本講義はプログラムの実装を目的としており、アルゴリズムの理解を中心に講義が進む。

ゲノム生物学

ドライとウェットに分けるとウェット側の授業。ゲノム生物学という科目名ではあるが、核内における生命現象全般を扱った。具体的には、以下のような内容について学んだ。

  • 転写、翻訳、DNA複製、DNA修復、タンパク質分解の各段階でどのような分子がどのように働いているか。
  • 発生、変態において生物の立体構造が決まる仕組み。立体構造とは例えば手は腕の手前ではなく腕の先に生える、など。
  • microRNAや siRNAが転写を制御する仕組み。microRNA、siRNAとは、近年話題のnon-coding RNA(タンパク質にならないRNA)の一種である。

どのテーマでも、全体的な考え方から分子同士の細かい関係までを学ぶことができた。

オーミクス論

オーミクスとは対象の構成要素全てについて網羅的に調べる学問で、調べる対象に接尾辞として付けられる。ゲノミクス、トランスクリプトミクス、フェノミクス、プロテオミクス、など。従来の生物学は個々の研究者が興味を持った事柄について深く調べるという仮説駆動型であったが、最近では全ての事柄について網羅的に調べるということが可能になり、得られた大量のデータから仮説を作り出す仮説生成型の研究が行われるようになってきた。この講義ではそれぞれのオーミクス(ゲノミクス、トランスクリプトミクスなど)について網羅的に調べる方法と、網羅的に調べたことによって現在までに分かったことを学ぶ。オーミクスでは、データの解析も重要であり、そのためにはドライ(計算)の技術が必要となるのだが、この授業ではドライの技術ではなくデータを得るまでのウェットなプロセスについて学んだ。オーミクスの発展で生物学における謎がより多く解けることが期待される。しかし我々にとって最も大きな謎は、なぜ先生が噛まずにあんなに早く話せるのか、ということである。

生命情報表現論

実験によって得られた多様なデータを、どのようにデータベースに格納し、また検索するかという技術を学びます。前半は、命題論理・述語論理及びその生物学的な応用が講義されます。駒場の総合科目A「記号論理学1」を履修しておくと楽に理解できるでしょう。後半は、データベースを活用した生物学の実例、データベースからの情報検索(Information retrieval)、自然言語処理についての基礎的な技術を学びます。知識だけでなく、今後生物学はどのように進展して行くか、という考え方についてよく講義して下さり、また情報科学についての前提知識が不要なため、生物情報科学科以外の人にも是非履修して欲しい講義です。

システム生物学(黒田先生)

システム生物学とは生命現象をシステムとして数理的に理解することを目的とした新しい学問分野で、分子レベルの理解を目的とした分子生物学とは異なるアプローチにより、生命現象全体を解明しようとする学問です。本講義ではシステム生物学における基本的な考え方や具体的な研究成果などを通じて、生命現象をシステムとして数理的に理解するとはどういうことかを学びます。高校などで学ぶ生物学とは視点が大きく異なるもので、生物学の知識の有無にかかわらず非常に興味の持てる講義だと思います。

生物データマイニング論(中谷先生)

以下の項目について概観した:

  • CTスキャナの出力した数値の可視化および輪郭抽出等の画像処理
  • 最尤推定法を用いて、離散的観測値間の遺伝子型の推定
  • データベース問い合わせ言語の仕様と実装方法
  • 決定木、AdaBoost、SupportVectorMachine等のクラスタリング手法
  • 数百次元の観測値とその統計処理による変異体の形態変化研究
  • 生命科学で用いる統計

いくつかは生物情報科学情報基礎実験の課題として実装したのでより深く理解することができた。また適宜参考文献を紹介して下さったので興味に応じた自習に取り組み易かった。ただし基礎から理解したい場合はフーリエ変換等の教養レベル以上の数学が必要なので努力を要する。